無料で利用できる Db2 Community Edition の概要・制限・ダウンロード方法
以前、IBM developer Works というサイトで「DB2 Express-C クイックインストール」というタイトルで無料版 IBM Db2 のインストールガイドを掲載していたのですが、developerWorksの閉鎖と共にアクセスできなくなってしまっていました。また、無料版のDb2の提供形態にも何度か変更がありました。そこで改めて無料版のIBM Db2の概要や制限、ダウンロード方法について説明します。Amazon EC2 にインストールする場合の注意点も合わせて記載しています。なおLinux版の具体的なインストール方法についてはこちらに書きました。
無料版 IBM Db2 の概要と制限
過去にはDB2 Express-C や、DB2 Developer Community Edition という名前で無料で利用できるDb2が提供されていましたが、現在は IBM Db2 Community Editonという名前で提供されています。だれでも無料で利用でき、制限についてはドキュメントによると以下の通りで、動作検証や小規模の利用には十分利用できるものになっています。
- メモリ制限 = 16 GB
- CPU制限 = 4 core
- データベースサイズ = 100 GB (※ドキュメントに記載はないのですが、ダウンロードページに100GBまでの記載あり)
- IBMからのサポートなし
記事執筆時点で、v11.5.8がダウンロード可能です。なおDocker版のDb2 Express-Cも用意されていますが、ここでは通常インストール版について説明します(※dockerでの導入は簡単で便利なのですが、恒常的な利用や性能測定等には向かないため)。利用可能なOSはWindows (x64)、Linux (x64)の他にAIX、Power PC Linux、IBM z/Linux が利用可能です。
Db2 for Linux (x64)をインストール可能な環境
Db2 11.5を導入可能なOSについてはこちらのドキュメントに記載があります。ドキュメントに記載が無いOSに導入しても動くことはありますが、Db2の動作要件にはカーネルや周辺ライブラリへの要件が細かく存在するので、できるだけドキュメントに記載されている環境で使用することをお勧めします。Linux (x64)向けでかつ無料で利用できるディストリビューションに限定すると以下の通りです。
OS | サポート期限 |
CentOS 7.9 | 2024年6月 |
CentOS 8.1 | 2021年12月 |
CentOS Stream 8 | 2024年5月 |
Ubuntu 16.04 LTS | 2021年4月 |
Ubuntu 18.04 LTS | 2023年4月 |
Ubuntu 20.04 LTS | 2025年4月 |
Db2 11.5がリリースされたのは2019年7月ということもあり、サポートされるLinux OSはやや古めです。上記の中から選択するとなると、サポート期限が残っている Ubuntu 20.04 、CentOS 7.9、CentOS Streams 8の中から選択するのが良さそうです。(厳密にはUbuntu 18.04も少しだけ残っていますが)
上記以外の選択肢としては、サポートリストには無いですが、RHEL 8との高い互換性をうたうRocky LinuxやAlmaLinuxもしくはSUSE Enterprise Serverとの互換性があるopenSUSE等も候補にして良いかもしれません。
Db2 for Windows (x64)をインストール可能な環境
Linuxと同様こちらのドキュメントに記載されています。その中から、64bit版のWindowsで現在もMicrosoftから標準的にサポートされている環境に限定すると、以下のリストになります。
- Windows 10 Pro/Enterprise
- Windows 11 Pro/Enterprise
- Windows Server 2012 (各種エディション)
- Windows Server 2012 R2 (各種エディション)
- Windows Server 2016 (各種エディション)
- Windows Server 2019
- Windows Server 2022 Standard Edition/ Datacenter Edition
多くの場合、PCに導入する場合はWindows 10か11を、Amazon EC2等のクラウドサービス上に導入する場合は上記Windows Serverのどれかを選択する事になりそうです。ただし、Windows Server 2012、及び2012 R2は2023年10月でサポートが切れるので、2016以降を選択するのが良いでしょう。
Db2 Community Edition のダウンロード方法
Db2 Community Editionのダウンロードには、IBMidでのログインが必要ですので、まだお持ちではない方はこちらのガイドを参照してID作成しておく必要があります(無料で作成できます)。
IDが作成できたら、こちらのURLからダウンロードが可能です。進めていくと以下のような画面が表示されますので、Linux (x64)版、もしくはMicrosoft Windows (x64)をダウンロードしてください。

以降はAmazon EC2上に導入する際のEC2の選択やAMIについての説明ですので、EC2を使わない方は読む必要はありません。Linux版のインストールガイドはこちらにあります。
Amazon EC2インスタンスの選択
ここではAmazon EC2 上にDb2 for Linux/ Windowsを導入する際の注意点を簡単に列挙します。まず、EC2インスタンスの選択については、以下に注意してください。
- プロセッサがINTELもしくはAMDのインスタンスファミリーを選択してください(GravitonはARMプロセッサのため利用できません)
- Community Editionの制限(4 core / 16 GBメモリ)内に収まるインスタンスを選択する必要があります。ここでいう4 coreがEC2の4 vCPUにあたるのか、Hyperthreadingを前提として8 vCPUなのかは明確な記載がないので分かりませんが、こちらのBYOLの際のライセンス計算ルールによると、 EC2上では 1 vCPU= 1 Core とみなして計算するとありますので、念のためEC2上でのDb2 Community Edition は 4 vCPU が最大と考えておくのが安全だと思われます
- 選択の例としては、M6i/M6aのxlarge (4 vCPU/16 GBメモリ)や、R6i/R6aのlarge (2 vCPU/16 GBメモリ)等が考えられます。
- 動作を評価するだけなら、安価なT3/T3aインスタンスも利用可能です。ただし、TファミリーのインスタンスはCPU性能がCPUクレジットによるバースト制になっていたり、ネットワーク性能の保障が無い等、性能評価には向いていない点には注意が必要です。性能評価をする場合はMやRファミリーを使用してください
- ストレージ構成は、簡単な評価だけであればGP3のEBSを1つ作るだけで良いですが、性能を測る場合は、EBSの特性を配慮したストレージ構成の検討が必要です(後述のスライドに記載があります)
- EC2の利用料金(単価)はリージョンによって異なります。評価上問題なければ、例えば米国リージョン(オレゴンや北バージニア)の方が、東京・大阪リージョンより安く利用できます
以下のスライドにもう少し細かい点で注意点をまとめていますので、必要に応じて参照してください。
– Db2 を AWS 上 に構築する際のヒント& TIPS
Amazon EC2 AMIの選択
続いてAMI(OSイメージ)の選択については、前述のようにDb2がサポートしているOSから選択することになります。
Windowsの場合の選択はシンプルです。EC2の管理コンソールのクイックスタートにWindowsがあるので、そこからWindows Serverのバージョンを選択するだけです。特に希望が無いならデフォルトのWindows Server 2022 で良いでしょう。

Linuxの場合、UbuntuであればWindowsと同様にクイックスタートから選択することが可能です。デフォルトのUbuntu Server 22.04 LTSはDb2 11.5ではサポートされないため、20.04 LTSを選択してください。

一方でCentOS等はクイックスタートにありません。また、Ubuntuでも18.04のような古いバージョンはクイックスタートからは選択できません。このようなAMIを利用する場合は、各OSディストリビューションがオフィシャルに提供しているイメージの一覧が以下に用意されているので、こちらから選ぶのが良いでしょう。
以下にいくつかピックアップして掲載します。AMIのIDはリージョン毎に別である点と、x64 (Amd64)版のAMIを選択する必要がある点に注意してください。
OS | リージョン | AMI ID (リンク) |
Ubuntu 20.04 LTS | ap-northeast-1 (東京) | ami-0d0c6a887ce442603 |
Ubuntu 20.04 LTS | us-west-2 (オレゴン) | ami-0db245b76e5c21ca1 |
CentOS Stream 8 x86_64 20210603 | ap-northeast-1 (東京) | ami-06ee905d0566e92e7 |
CentOS Stream 8 x86_64 20210603 | us-west-2 (オレゴン) | ami-056c679fab9e48d8a |
Rocky-8-EC2-LVM-8.7-20230215 | ap-northeast-1 (東京) | ami-05c652e1fd42e97f5 |
Rocky-8-EC2-LVM-8.7-20230215 | us-west-2 (オレゴン) | ami-091fc5fc8ec8b15e7 |
AlmaLinux 8.7.20221110 | ap-northeast-1 (東京) | ami-05faf1bb6b8ea4b89 |
AlmaLinux 8.7.20221110 | us-west-2 (オレゴン) | ami-0f12219b4df721aa6 |
EC2環境が準備できたら、あとは通常のサーバーと同様にインストールをすることができます。Windowsの場合はRDPでログインするため、Db2のGUIインストーラーで導入する事が多いと思います。Linuxについては、SSHやSSM Session Managerを使ってコンソールログインして、コマンドラインでDb2を導入するケースがほとんどでしょう。