先日、このブログを Amazon Lightsail から WordPress.com (WordPress専用のホスティングサービス)のPersonalプランに移行しました。このエントリでは移行の理由と、Personalプランでできることや制限について記載します。

※2025/1追記:以前はStarterと呼ばれていたプランがPersonalになっていたので、タイトルと文を更新しました。Starterはさらに以前にはPersonalと呼ばれていたので、名前が元に戻った形です。

運用管理をしなくてすむ環境へ

これまでは Amazon Lightsail(VPSサービス)にWordPressを導入して利用していました。使いたいソフトウェアスタックを選択するだけでWordPress等が起動するところまで作ってくれるとても便利なサービスなのですが、定期的なインフラソフトウェアのアップデートはユーザーが実施する必要があります。特にPHPとApacheはセキュリティ的な課題が出ることもあり、サポートされなくなる前に定期的にアップデートしていく必要がありました(その方法についてはこちらに書きました)。

移行の理由はこのアップデート作業をやめたかったからです。私が調べた中では、そういった運用をサービス提供者が実施する、いわゆるマネージドなWordPressサービスの中ではWordPress.comのPersonalプランは安価です(費用は後述)。なによりAutomattic社によるワールドワイドの運営なのでサービス提供の技術力やサービス継続にも安心感があります。(補足: WordPressはOSSのコンテンツ管理システムで、WordPress.orgからダウンロードできます。このWordPressのホスティングサービスを提供しているのがWordPress.comです。)

私が選択したPersonalプランはユーザーがインフラにたいして出来ることはほぼ何もありません。管理画面にはWebサーバーやRDBに何を使っているかといった情報や、PHPやWordPressのバージョン情報すらありません。まさに私が希望する管理不要な環境です。

一方でマネージドサービスは、VPSやレンタルサーバーに自分でWordpressを入れるような環境と違い、運用が楽になる代わりに自由度が減るのが一般的です。以下に書くようにPersonalプランは制約も多いので、自分の用途で問題なく使えるかが選択のポイントです

WordPress.comのプラン/機能の違い

WordPress.comで提供しているプランは、個別契約のEnterpriseやBluehostという外部サービスへのホスティングを除くと以下4つに無料で使えるFreeプランを合わせた5つです。

このうち、Business/Commerceは自由度が高く、Free/Personal/Premiumとは全く異なるサービスという点に注意してください。後述するような制限のほとんどは Free/Personal/Premiumにのみ当てはまります。一方で(私が利用している)Personalプランは1年払いにすると、月当たり580円とマネージドなWordPressとしては大変安価です。※スクリーンショットでは400円になってますが、これは1年目だけSpecial Offerが提供されている期間だったためです。

ただし、料金は変更になる可能性がある点に周囲してください。私が最初に契約した2024年時点では、1年払いで564円/月でした。また、2年、3年単位の契約もあり、その場合はより安価になります。

Personalプランの機能と制約

プランの比較詳細はホームページに表がありますので、特に気を付けるポイントだけここでは記載します。

Freeプランとの違いは、広告が出ない(ただしフッターに小さいWordPress.comロゴかリンクは残る場合がある)、独自ドメインが使える、音声ファイルが置ける、メールによるサポートがある、ストレージサイズが1GB->6GBに増加、というあたりが主な違いです。私の場合は独自ドメインと音声ファイルは必須でした。ただ、これからWordPress.comの有料プランを考える際は一度Freeプランで動作を確認してみる事をお勧めします。

逆に気を付けるべき制約はプラグインの導入ができないこと、テーマが自由に選択できないこと収益(広告)の方法に制限があることです。

プラグインの導入は不可

プラグインはWordPressの重要な魅力の1つなので、ないと困るという人も多いと思います。使いたい場合はCreator以上のプランへの加入が必要になります。ただし、Akismetによるアンチスパム機能と、サイトへのアクセス数等を分析するためのJetpack統計は使えるようになっているので、個人的には問題ありませんでした。

テーマは用意された中から選択

テーマはWordPressの見た目を変える機能でこれも重要なポイントだと思います。Personalプランは、独自にテーマを導入することはできず、用意されているものから選ぶのみですが、無料(Free)プランでは利用できなかったプレミアムテーマからも一部追加で利用可能になっているので、選択肢のバリエーションは豊かです。また、テーマの中で(与えられた範囲で)カスタマイズはできます。例えば本サイトだと、トップページにYoutubeが埋め込んであったり、各種メニューやリンクをカスタマイズしたりしています。

ただし、一部のプレミアムテーマは選択できないですし、選択したテーマを何でもカスタマイズできるわけではありません。特にフォントの変更、カラースキーマの変更(CSSの変更)はできないようになっており、細かく調整したい人はExplorerプラン以上に上げる必要があります。また、私は気にしませんが、フッター最下部にWordPress.comの小さいロゴもしくはリンクメッセージが出るのを削除できないようになっているテーマもあります。完全にコントロールしたい場合はBusiness以上のプランが必要になることも多いと思われます。

テーマ周りは上位プランに上げる以外にもアドオンを購入することでも少し対応できるようになっています。下図のようにプレミアムテーマや、カスタムCSSは個別に契約可能です。(以下を2つとも購入するぐらいならExplorerプランにした方が良いと思います)

WordPress.comアドオン

収益化の制限

アフィリエイトやGoogleアドセンス等、サイトの収益化を目的としてブログを書く場合はプランの選択に注意が必要です。

Personalプランでできる収益化は、アフィリエイトリンク、プレミアムコンテンツ(サイトのサブスクリプション購入者のみ閲覧可能なコンテンツ)、有料ニュースレターです。(この他、寄付・チップを募ることも可能です。ただ、寄付やチップを受け取ることが法律上問題ないのかどうかは私は分からないです。)

アフィリエイトリンクは以下の制限があります。

ギャンブル、一獲千金を狙った計画、マルチ商法プログラム、評判の悪い業者、性的に露骨な素材、マルウェア、フィッシングタイプの悪徳商法に関連するアフィリエイトリンクの掲載は許可されません。また、アフィリエイトリンクにトラフィックを転送することを主な目的とするサイトも許可されません。

つまりAmazonやRakutenといったアフィリエイトリンクを張っての収益化は可能です。

一方で広告収入、つまりGoogleアドセンスはPersonalやPremiumプランでは利用できません。Business以上のプランが必要です。Automattic社が運営するWordAdsは、Premiumプラン以上で利用可能です。

なお、私の理解が間違っているかもしれないので、収益化を考える場合は必ず以下のオフィシャルのドキュメントを参照してください。また、WordPress.comの日本語フォーラムで質問してみるのも良いでしょう。

パフォーマンス

こちらによると、Automattic社のサーバーは世界中にあるデータセンターに配置されているとのことで、日本にあるかどうかは分からないのですが、こちらによるとCDNは内蔵されているということで、それもあってか十分なパフォーマンスが出ています。私の場合は事前にFreeプランで仮サイトを動かして、問題なさそうなことを確認してからPersonalプランを契約しました。

前述のようにインフラに対して出来ることは何もないので、もし性能面が不足した場合は上位のプランに更新する必要があります。Creator以上では自由にプラグインを導入できるようになり、JetPackのカスタマイズ範囲も広がります。

移行(マイグレーション)

移行はとても簡単でした。Freeプランでアカウント作成後、旧サイトからWordPressの機能でコンテンツをエクスポートし、それをWordPress.comでインポートするだけですぐに動作を確認することができました。その後Personalプランを購入して新たにインポートしなおし、テーマを変えたり、少しカスタマイズをしたり、元のサイトで使っていたプラグインの要素を削除したりして利用しています。

移行後の記事のURLは example.com/YYYY-MM-D/your-slug/ 形式になり、途中の日付(YYYY-MM-DD)を消したり最後のスラッシュ(/)を消すオプションはありません。ただしyour-slagだけでアクセスしても適切にリダイレクトされるため、移行前のURLでもアクセスは維持されます。たとえば本記事なら、 https://portablecode.info/migrate-wordpress-starter でもアクセスが可能です。

まとめ:WordPressであれば再度の移行も簡単

上記のようにWordPress.comのPersonalプランは、表現面と収益化において制限があるのですが、私はどれも問題なく、運用不要という点に満足しています。なおWordPress.comを含むAutomattic社のサービスの稼働状況はこちらで確認できます。

WordPressにこだわらなければ、ブログを書くためのプラットフォームかつ運用不要のものは他にもありますが、私にとっては、世界でもっとも使われているCMSであるWordPressである点が重要なポイントでした。もしWordPress.comのサービスが合わなくなった場合は、別のWordPressホスティングサービスや、セルフホスティングに戻ることができるからです。

ブログサイト選択の参考になれば幸いです。

“WordPress.com への移行/Personalプランの機能と制限”. への1件のコメント

  1. Amazon Lightsail+WordpressのPHPやApacheを更新する – Portablecode.info のアバター

    […] このブログはAmaozn Lightsail上の一番安価な仮想サーバ上でWordpress+Apache HTTP Server+MariaDBという組み合わせで動いているのですが(補足:その後WordPress.comへ移行しました)、全てを自分でセットアップしたわけではなく、Lightsailで用意されているWordPress Certified by Bitnamiを使っています。簡単にWordpress環境が利用できるのですが、インストール後は定期的にWordpress、PHP、Apache、MariaDB等の更新をしていく必要があります。その更新方法についての記録です。 […]

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