これまで2つのPodcast (SKO Radio, OTF Talk)をやってきた中で、いくつかの種類のマイクやオーディオインターフェースを使ってきたのですが、Podcastを録音する際にオーディオインターフェースに重視した方が良い機能は、リミッター、ミュートボタン、マイクプリアンプの低いセルフノイズではないかと思っているのですが、これは一般的にいう「良い音のオーディオインターフェース」とは異なる検討ポイントです。
Podcast録音における良い音
良い音という言葉はかなり曖昧な言葉で、マイクやオーディオインターフェースを検討する際にも注意が必要です。
例えばレビュー等で「良い音のオーディオインターフェース」を語られる際、多くのケースで「スピーカーへの出した時の音」についての説明がされています。しかし、Podcastの録音には関係ありません。あえて言うならヘッドホン出力はインピーダンスの大きいヘッドホンでもドライブできるものが望ましいですが、クリティカルリスニングのようなクオリティが必要なわけではなく、大半のオーディオインターフェース&ヘッドホンの組み合わせではそこがPodcast制作上の問題になることはありません。
同様に「良い音がするマイク」は個人の声や好みが大きく反映される領域だという点に注意が必要です。周波数特性だけでも様々で、フラットなマイク、高音が伸びる(強調される)マイク、低音が出るマイクと色々ありますが、どれが良いかは好み次第です。録音スタジオで歌を録音するために使うようなマイクは低音から高音まで綺麗に録音できますが、自宅でPodcastを録音する場合はむしろ不要な音を拾いやすくなる場合もあり、高級なマイクが良いとは限りません。
良い音のためには、録音環境が大切
録音機器よりも録音環境を良くすることが重要です。ノイズとエコーが少ない場所で録音することが、もっとも容易にPodcastのクオリティを向上させます。
録音する場所が自分の部屋しかなくても、例えば夜遅めの時間に録音する(外音が入ってくる可能性が減る)、エアコンを切る、マイクをPC等の騒音源から離す、マイクを口から10cmぐらいに近づける、といった工夫で改善できます。
特に口とマイクの距離は一番クリティカルな要素です。例えばPC(騒音源)の近く、かつ口から遠い位置に配置するというのが一番悪い方法で、口から遠いのでゲイン(録音の音量)を上げることになりますが、そうするとPCからのノイズがさらに大きく録音されることになり、良い録音にはなりません。一方で、PCから距離を離し、口元に近づけるとクオリティが改善できます。
Podcast用の機器選び
マイクはお好みで
マイクは数千円から100万円を超えるものまで製品の幅が広いですが、よほど変なものを選ばない限りどれを選んでもPodcastには問題ないです。後述するように私が使っているのは1-2万円クラスのマイクですが、十分なクオリティを提供してくれています。以前は3,000円のマイクを使っていましたがこれでもPodcast用には問題ありませんでした。
前述したように自分の声や好みに合うかどうかが一番重要です。また、Podcastの場合は編集時にイコライザ(EQ)をはじめとしたプラグインで編集ができるので、その意味でも最初からあまり高いものを買う必要は無いです。
一般的には、Shure SM58のようなカーディオイド(単一指向性)のダイナミックマイクがPodcastやナレーション用に良いとされていますが、コンデンサーマイクにも指向性が強くて使いやすいものがあります。録音環境の違いで評判も変わりますし、なによりも好みの要素が大きいと思います。
好みを見つけるためには、色々聞き比べてみるのが一番です。昨今はYoutubeにレビューが沢山あがっていて多数聞き比べることが可能です。参考までに私が良く見ているマイクレビュアーを以下にリストします。
- Podcastage (一番お勧め、多数のマイクをいつも同じ方法でレビューしてくれている)
- Audio Hotline (こちらもレビュー多数。比較的安価な製品のレビューが多いです)
- Curtis Judd(マイクレビューはそこまで多くないですが、レビュー時には男性・女性両方のオーディオサンプルを付けてくれています)
オーディオインターフェース、USB接続マイク
一般的なXLR端子のマイクをPCやスマホにつなぐにはオーディオインターフェースという機器が必要です。昨今値上がりが激しい分野の製品ですが、コンシューマー用であれば安価なものなら1万円ぐらいから、上位機種は数十万円まで、これも価格に幅があります。
最近は、オーディオインターフェース不要でUSBに直接接続できるマイクの選択肢も増えていますが、これはある意味オーディオインターフェースを内蔵したマイクと言えます。
私はPodcast録音には以下の機能が重要だと考えています。
- リミッター もしくは、調整が効くコンプレッサー
- リミッターは大きい声を出してしまった時(大笑いした時とか)に、音割れ(ピークに到達)を防ぐための機能で、特にゲストを交えての録音ではこれが一番重要だと思っています。
- ゲストを交えての録音ではやり直しができないことがほとんどです。音については編集である程度対応できるのですが、音割れしたものはどうしようも無いので、それを防いでくれるリミッターは重要です。
- リミッターの実装方法は色々ありますが、オーディオインターフェースのハードウェア機能として実装さえているのが望ましいです。PCに入力された後にプラグイン等で信号処理できますが、入力時点で割れた音は戻せないためです。
- 一方でリミッター機能を持っているオーディオインターフェースは非常に少ないです。3万円以下で買える範囲だと私が使っている elgato Wave XLR か、Shure MVX2U 、LEWITT Connect 2ぐらいしか見つかりませんでした。
- リミッターが無い場合は、コンプレッサーでもある程度代用が効きます。ピーク近くの大きい音を1:10といった高いレシオで圧縮することで実質的にリミッターにできるからです。ただ、コンプレッサーを持つオーディオインターフェースは多数販売されていますが、音が割れる前に(アナログ側の工夫で)コンプレッサーが掛かるかは確認した方が良いでしょう。
- 静音のミュートボタン
- 急に咳が出る、背後の音がうるさくなった等、収録中にこちらのマイク音をミュートしたい場面はしばしばあり、オーディオインターフェースやマイク側にミュートボタンがあると便利です。もちろん録音サービスやDAW(録音・編集に使うソフトウェア)側にもミュート機能があるのですが、ハードウェアボタンがあるととっさに押せるメリットがあります。
- ただ、ミュートボタンを押した時にその音がマイクに入ってしまうようだと使いづらいので、ボタンを押した時の音がしないもの(静電容量式タッチボタンやゴムボタン)を搭載した機器がお勧めです。
- フロアノイズが低く十分なゲインのマイクプリアンプ
- マイクプリアンプというのは、マイクから入った音を大きくする(ゲインを上げる)ためのアナログ装置です。アナログ装置なので、アンプ自身のノイズ(フロアノイズ)は必ず発生し、このマイクから入れた音にこのノイズがのる形で録音されます。また、 最大ゲインが十分でないと必要な音量が得られない場合があります。
- ただ、マイクプリアンプのノイズやゲインを気にする必要があるのはダイナミックマイクを利用する場合だけで、コンデンサーマイクの場合は気にする必要はありません。コンデンサーマイクの場合マイクからの出力が大きいので、ゲインをあまり上げる必要がなく、結果としてマイクプリアンプのノイズも、人間が聞こえるレベルまで大きくならないからです。一方でダイナミックマイクの中でも特に出力が小さいもの(有名なのはShure SM7b)は、大きいゲインが必要になり、マイクプリアンプのクオリティがより重要になります。
- Julian Krauseのレビューを見ている限り、最近リリースされたオーディオインターフェースの多くは問題ない程度のノイズで、ゲインも十分ある場合が多いようです。Julianのオーディオインターフェースレビューはマイクプリアンプ以外にも多数の項目で精緻な計測が行われているのでぜひ確認してみてください。
補足として、昨今のオーディオインターフェースやUSBマイクにはノイズリダクション(ノイズ削減)機能がハードウェア、ソフトウェア問わず付いているものが多いですが、Podcast録音時には使わないことをお勧めします。ノイズは後で編集で消せますが、ノイズリダクション機能のために不自然になった録音を元に戻すのは難しいからです。
75Hzや100Hzあたりでハイパスフィルタ(ローカット)の機能がついている場合もあり、これも基本的には使わずに編集時にEQを掛けた方が良いと思いますが、100HzのローカットでPodcast用の音声が致命的に悪くなることはほぼ無いので、編集を楽にするために使うのはアリだと思います。
一方でライブ配信だと少し事情が異なります。後から編集できないので、機器側のハイパスフィルタやノイズリダクションが有用な場合もあります。とはいえ、配信ソフトウェア(OBS) でも調整は可能です。
私のセットアップ
ご参考までに私の現在の利用機器です。メインのマイクはSE v7ですが、低音から高音まで綺麗に録れる分、ブレスやリップノイズも入りやすい傾向があり、編集で楽をしたい時はやや感度が低いSM57 & ウィンドスクリーンを使っています。
オーディオインターフェースはElgato Wave XLRでハードウェアのリミッター(クリップガード)、静音ミュートボタン、良いマイクプリアンプ(プリアンプノイズが低い)を備えているオーディオインターフェースです。
- マイク
- SE v7
- Shure SM57 + A2WS-BLK(ウィンドスクリーン)
- オーディオインターフェース
- Elgato Wave XLR
- Wave XLR Fallout edition
- ※下段はFallout editionというモデルへのリンクで、私が使っているものと見た目が異なるのですが、機能は同じです。タイミングによってはこちらの方が安く買えます。
Wave XLR以外のオーディオインターフェースの選択肢だと、LEWITT CONNECT 2 が良さそうです。こちらにもElgato Wave XLRと同様のミュート機能、プリアンプ、リミッター(クリップガード)が内蔵されているだけでなく、Line in (ギターなどを接続)とオーディオアウト(スピーカー接続)も付いています。LWEITTとElgatoはパートナーシップを結んでいて、LEWITTとの協力でWave XLRが作られたという背景があり、そのため機能が共通しているようです。CONNECT 2の方が機能が多い分定価は高いのですが、最近はCONNECT2の値段が下がったことがあり、どちらも変わらない値段になっています。
あとはShure MVX2U も検討に入ると思います。こちらは超コンパクトなのが良いところですが、ミュートボタンがないことと、プリアンプノイズがWave XLRより大きい点には注意が必要です。
コメントを残す