無料で利用できる Podcast リモート収録環境の調査メモ

今年に入ってから、私を含めたホスト3人がゲストのお話をうかがう、SKO Radio というPodcastをはじめました。収録は基本的にリモートで行う想定になったので、Podcastのリモート収録(録音)に利用できるサービスや環境について調べました。その調査内容のまとめです。

2023年10月25日追記: Zencastrの無料プランであるHobbyst Plan/Creator+ Planの廃止がアナウンスされました。

リモート収録で重視する機能 – SKO Radioの場合

収録(録音)に必要となる機能はPodcastの内容や運用スタイルによって異なると思いますが、 SKO Radio のリモート収録では以下の機能を必須としてサービスを調査しました。

必須の機能

  • 参加者毎に音声ファイルが生成される事(マルチトラック録音):Podcastの編集においては、しゃべっている人の声を残しつつ不要な声やノイズをカットすることが多々あり、Podcastをやる上では必須といって良い機能だと思います。
  • ローカル録音のサポート:音声をサーバーに送って、そこで録音するのではなく、いったんはローカルPC(ブラウザ)側で録音し、そのデータを平行してサーバーにアップロードする方式です。ネットワークの調子が一時的に悪くなっても安定した音声が録音できるため、これも重要な機能です。
  • 最低でもリモートで4名参加可能:SKO Radioはホストが3名のため最低でも4名入れる必要があります。これはPodcastの運営スタイルによって大きく異なるところでしょう。
  • PC/Macのブラウザだけで参加できる:これを重視したのは、色々なゲストに出てもらう事を考えると、ソフトウェア(アプリ)を入れないと使えないようなものは避けたかったためです。
  • ⑤無料もしくは安価に利用できる範囲で、毎月数時間程度の音声録音が可能なこと。

一方で、以下はあれば嬉しいが必須ではないと考えた機能です。

あれば嬉しい機能

  • ブラウザ内での音声編集機能:カット編集等がブラウザでもできると便利です。ただ、私の場合は別途PCのソフトウェア(Reaper)で編集することにしたので、これは必須ではなくなりました。Audacityをはじめとして、無料で利用できる編集ソフトは多数存在します。
  • 音声クオリティ向上のための仕組み:背景ノイズ削除やイコライザ等を持っているサービスもあります。こちらも収録語の編集ソフトで加工する想定だったので必須ではありませんでした。
  • スマホからの参加:これはむしろ必須と考える方も多いのではと思いますが、SKO Radioの場合、ゲストはIT業界の人であり、まず間違いなくPCを持っているのでこれも必須ではありませんでした。
  • ビデオPodcast収録:昨今Podcastをビデオ付きで公開したりYourubeにも平行でアップロードする流れもあり、各サービスもビデオ収録には力をいれており、4K収録可能をうたうものもあります。ただ、私たちはビ音声のみのPodcastの想定でした。
  • Podcastのホスト機能:公開したPodcastのMP3ファイルをホストしてくれる機能です。SKO Radioでは別途Spotify for Podcaster (旧:Anchor)を使う予定だったので、必須ではありませんでした。

無料で利用できるリモート収録サービス:まとめ

全てを確認したわけではありませんが私が調べた範囲でまとめると、無料で利用できるPodcast収録サービスで、SKO Radioの必須要件を満たしているものとしては以下のような選択肢がありました。

サービス①マルチトラック録音/②ローカル録音③参加可能人数(ホスト+ゲスト)④参加方法⑤無料プランでの録音時間音声フォーマット
Zencastr12PCブラウザ無制限(音声) ※補足1無料プランは MP3 192Kbps, 有料プランは16-bit 48kHz WAV
Cleenfeed△ マルチトラック録音は有料プランのみ規定なし。マルチトラック録音の場合は最大32PCブラウザ無制限(音声)MP3 256Kbps(mono), 320Kbps(stereo)
Riverside.fm△ マルチトラック録音は有料プランのみ8PCブラウザ/スマホシングルトラック録音は無制限無料プランは44.1kHz WAV, 有料プランは48kHz WAV
Podcastle10PCブラウザ/スマホ音声のみは無制限無料プランは MP3 160Kbps , 有料プランは 48kHz WAV

上記の中でも無料ですべての機能を満たすのはZencastrとPodcastleでした。Zencastrはテストした範囲で問題なく利用できました。Podcastleは機能面ではZencastrよりも多機能なのですが後述のように私の環境では使用したいマイクデバイスをうまく選択できなかったこともあり、現在はZencastrを使用しています(追記:2023.09.17 Podcastleでも適切にマイクデバイスが選択できるように改善されていました)。

なお配布用のホスト環境は前述のようにSpotify for Podcaster (旧:Anchor)にしました。これは無料で制限なくエピソード登録できるという点や、大手Spotify傘下のため今後の運営は問題なさそうだと考えたからです。

※補足1:Zencastrを利用しはじめた際は音声のみであれば特に条件もなく無制限記録ができたのですが、プランが改定され、Hobbyistと、Creator+という2種類の無料プランに変更になりました。Hobbyistは特に利用条件がない無料プランですが、音声・ビデオ録画が月に2時間までです。Creator+は音声録音無制限になりますが、Zencastr Creator Networkへの加入が必須になります。加入は無料ですが、Podcastホスティング元をZencastrにするか、もしくはホスティングしているサイトにビーコンPixelを入れる等の対応に加え、加入の審査があります。これはCreator Networkが広告を出してレベニューをシェアするための仕組みだからです。

各サービスの特徴:一言メモ

以下はサービスを調査したときのメモを簡単にサマリしたものです(上記表に記載していないサービスも含みます)。

  • Zencastr: 有名サービスの1つ。PCブラウザだけで利用可能。無料プランでも音声だけなら月あたりの録音時間制限がなく、192KbpsのMP3で録音できる。音声ファイルの保存期間は無料プランだと90日間。(SKO Radio開始時はFree+プランで利用していたが、2023年3月にFree+プランがCreater+プランに変更された。)
  • Cleenfeed: 有名サービスの1つで、Podcast用というよりリモート音楽スタジオサービス。レイテンシの小ささが特徴。無料プランもあるが、無料プランではマルチトラック録音に非対応。
  • Riverside.fm: 比較的新しいサービスだが、人気のサービスで無料プランあり。ただし無料プランではマルチトラック録音には非対応。4Kビデオや、書き起こし、同時ストリーミング配信等、機能は豊富。
  • Squadcast:有名なサービスの1つ。無料プランは無く、$20/月から。
  • Iris – ブラウザのみで利用でき、マルチトラック録音に対応。無料プランは無く、$9/月から($9プランの場合録音は月2時間まで)
  • Podcastle: 2020年スタートの新しいサービス。録音だけでなく音声エディタ、ノイズ除去等も内包した統合的なサービス。無料プランでも160KbpsのMP3で録音可能であり、音声だけなら録音時間制限なし。ただし録音の物理デバイス1つにつき、1つの入力デバイスしか選択肢に出てこないというアプリケーションの制約がある。たとえば私が使っているElgato Waveだと1台あたり4つの仮想インプットデバイス(仮想録音デバイスドライバ)があるが、このうち1つしかWEBアプリ上に表示されないという制約が(調査当時)あり、適切な仮想デバイスを選択できなかった。(追記:2023.09.17 適切にデバイスが選択できるように改善されていました)。
  • Zoom: 有名なオンライン会議サービス。比較的最近のバージョンで音声を分離(話者単位で)録音できるようになった事と、音声設定にハイクオリティ(Music)モードが選択できるようになった事で、Podcastのリモート収録にも十分に使えるようになった。無料プランだと一回の会議あたり40分間の制限がある。ZoomでのPodcast録音を実行する際の設定方法についてはこの記事が具体的で分かりやすい。
  • StreamYard: 有名なライブ配信サービスだが、ローカル録音という機能があり、話者別の録音・録画をローカルに保存できる。無料プランにおいては「 無料プランでのローカル録画は1か月あたり2時間に制限されています(また、ライブ配信ではなく録画でのみ使用できます)。 」という制限あり。
  • Spotify for Podcasters (旧Anchor): Podcastのホスト機能だけでなく、リモート収録機能(Record with Friends)があり、無料で時間無制限で利用できる。ただし、ホストはスマホアプリで参加する必要がある(PCから操作できない)

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